「フランス語プロムナード」というフランス語学習コミュニティを運営しています。
フランス語の勉強でとにかく一番大変なのは動詞の活用で、ここを突破できずにフェイドアウトする人が多いです。(私自身も真剣に勉強しようと決める前はなんとなくで終わり突破できませんでした。イタリア語もフランス語とした系統の言語なので動詞の活用が大変で、何年か勉強してて教室まで行ってたのに突破できず挫折しました。)
とにかくサポートがないとなかなか突破できないのがフランス語の動詞活用。これを知らないと結局は文を作れないし進まないので覚えるしかありません。
そこでコミュニティでは覚えるきっかけになるようにと、「動詞活用マラソン」なるものを年に何度か開催しています。
そんな中、S’asseoir(座る)という動詞、活用が2種類ありますよね、どちらを覚えればいいんですか?という質問を受けました。
私自身がこの動詞の活用に2種類あるのに気が付いたのは数年前でした。フランス語初級者として勉強していたのは30年以上前で、その頃は2つあることを知っていた可能性はありますが、その後、フランスでの日常生活で常にフランス語を使っていても活用を意識することがなくなっていました。
何かの時にふと、この動詞の活用ってどうなっているんだっけ?と思い、調べたのですが、その時に2つあって、え??と思った記憶があります。
結論に行きつくまでに長くなりそうですが、一応、辞書に書いてある2種類の活用の現在形をここに書きますね、と言いたいんですが、辞書に載っているものは実用的じゃないんです。
まず
s’asseoir サソワール 「座る」
という意味ですが、辞書は原形をasseoirとしてAのところに入っていて、これは「座らせる」という意味です。自分が座る場合は代名動詞として主語を再帰代名詞にして繰り返します。「座らせる」より「座る」方が実際に使うことが多いので、辞書のAsseoirを活用した書き方はあまり実用的ではありません。手元のBescherelle(フランス人なら誰もが知っていて学校時代にお世話になって動詞活用のバイブル的な本)を見るとやっぱりasseoirの活用が載っています。
(ここでは余談ですが、実は原形の綴りも2種類あります。S’asseoir とs’assoirです。前者が伝統的な書き方で後者は1990年の綴り字改訂で認められた綴り方です。Ssの後ろのeがあるか、ないかの違いです。確かにこのeは音的には何の役目も果たしていないのでなくても良い気がします。音を聞いて自然に綴ると書かない人が多そうですが、印刷物などで実際に目にするのは伝統的な前者の方です)
辞書に掲載されている活用のままでは使いにくいので、ここでは再帰代名詞の形にして提示しますね。
1つ目の活用の直接法現在形だけ書きますと
Je m’assieds
tu t’assieds
Il s’assied
Nous nous asseyons
Vous vous asseyez
Ils s’asseyent
2つめの活用の同じく直接法現在形は:
Je m’assois
Tu t’assois
Il s’assois
Nous nous assoyons
Vous vous assoyez
Ils s’assoient
見てください。結構違っています。
で、両方覚えるんですか?用法にはどんな違いがあるのですか、という質問に対する答えですが、結論から言うと、両方覚えることになります。でもこの2つは用法の違いではなく話者の習慣の違いだと思われます。
日本語でも野菜のナスのことを「なすび」という人がいますよね。人によってどちらかを使っていて場合によって言い分けたりはあまりしないと思います。それと同じようなもので、私自身がこの動詞の自分が覚えている活用を調べたら2種が混じった活用をしていることに気づいたのは数年前です。周囲のネイティブに活用を言われてみると、みんな私と同じ混じり方でした。その影響で私自身もそれと同じのを覚えたのかもしれません。地方や人によって大きな違いがあるのかまでは分かりません。ネットで調べてみましたが統計などはないようです。
私(たち)の活用は
Je m’assois
Tu t’assois
Il s’assoit
Nous nous asseyons
Vous vous asseyez
Ils s’assoient
命令形は
Assiedds-toi
Asseyez-vous
夫にさっき言わせてみたら、これと同じでした。実は2種類が混じってるって知ってた?と言ったら、そんなことを気にしたことはないそうです。私も長年気にしていませんでした。
さっき次女にまた聞いてみましたら、次女もこれと同じでした。命令形も2人とも私と同じでした。
日常よく使うのは現在形よりは複合過去と大過去だと思います。これはどちらのパターンでも同じです。よく分からないで使っていましたが間違っていなかったことを今確認しました。念のため活用を書いておきますね。
過去分詞の形は1種類しかないので、どちらも同じで以下のように活用します。
複合過去(主語が男性の場合)
Je me suis assis (主語が男性の場合、女性の時は過去分詞がassiseになります)
Tu t’es assis
Il s’est assis
Elle s’est assise
Nous nous sommes assis
vous vous êtes assis
Ils sont assis
Elle sont assises.
命令形は2種類の活用があります。
1つめは
Assieds-toi
Asseyons-nous
Asseyez-vous
2つめは
Assois-toi
Assoyons-nous
Assoyez-vous
と書いてありますが、私はAssoyez-vous なんて聞いたことがありません。Nousの命令形はこの動詞ではほぼ使うことがないと思うのでどちらも聞いたことがないです。命令形は私は1つめで2つめは自分も使わないしほぼ聞いたことがないですね。次女(フランス生まれのフランス育ちでもう成年に達しましたのでネイティブスピーカーです)にこの話をしたら、昔学校の先生からAssois-toiと言われた記憶があるけど、確かにあまり使わないって言っていました。
2種類の活用を混じって使って結局は1種類しかない気がするのですが、人によってもう1つのを使うこともあるので結局は両方要る、ということです。面倒臭いですね…。
2種類あるのはこの動詞ぐらいだと思いますのでご安心を。
なお、初心者の方のために補足しておきますと動詞の時制はここに挙げた以外にもあります。面倒臭いですが、やっぱり根気よく覚えていってください。いろいろ足掻いているうちに覚えていけます。諦めずにしつこくやる以外にないですね。
活用表ですがオンラインの活用表、Le Fogaroのものは優秀でちゃんと代名動詞で活用が載っていました。1er forme (1つめの形)2e forme(2つめの形)として1つ載っています。ただし順序が私のと逆です。私の1つめはこちらでは2つめです。私のはBescherelleの順番です。
Le Figaro Conjugaison
音声はこちらにありました。でも1つめのパターンだけです。
Verbe S’asseoir (S’assoir) – conjugaison & audio
音声についてですが、提示されている活用が代名動詞になっていないですが、プチロワイヤルの辞書アプリの活用のところに1つ1つ発音が入っています。asseoirを引くと見出し語の横に番号が2つ、75(a) 75(b)と出ています。普通はこの番号が1つしかないんですが、この動詞はは2種類あるので2つあります。クリックするとそれぞれの活用のページに行きます。
この辞書については前にこちらに記事を書きました 。フランス語の辞書アプリ
これは「僕は座っている」という意味で、assisはこの動詞の過去分詞の形ですが、形容詞として使われています。フランス語では動詞の過去分詞が形容詞のように使われることがよくあります。
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