フランス(穴場)紀行 ― ブルターニュの小さな村Poul Fétanプルフェタン

今日紹介するのはブルターニュの小さな村Poul Fétanプルフェタンです。

カルナックのホテルに滞在している時にブルターニュ文化についての講演会が毎晩あり、なんとなく興味があったので聞きに行ったらその中で余談として出てきたのがこの村でした。調べてみたらカルナックから北東に14kmのところでそんなに遠くないので気軽に出かけました。行ってみたらとても面白く、もっと宣伝すれば良いのに、と思ったのでここで紹介します。

この村の特徴は1850年で時間が止まったかのように村全体が当時のまま残っていることです。ネットで見てもなぜこのように残ったのかの説明が見つかりませんでしたが、行った時にガイドさんが説明してくれたことを覚えている範囲で書いておきます。上の写真中央の黒い帽子をかぶった男性が面白おかしくこの村の歴史について語ってくれました。


藁ぶき屋根の伝統的な家から成る集落ごと、そっくりそのまま残っているのは珍しいことだと思います。ガイドさんによると15世紀からこの村に人が住んでいた記録が残っているそうで、5家族ぐらいだったのがだんだん増えていき、最盛期には農業で栄えていたそうです。まだ農業が機械化されていなかった時代ですから、季節労働者が数多く村外からやってきて、農作業をしたり、歌ったり踊ったり、活気ある村だったようです。ブルターニュのあの列を成して足を踏み鳴らす踊りは土地を踏み鳴らすのに役立ち、腕を回す踊りの振り付けも農作業で同じ動作を繰り返して疲労がたまった腕のリラックスに役立つとのことで、なるほど、と思いました。

近代化の波が来て時代が変わる中、人口が減っていき家を売って村を離れる人たちが出てきました。その売りに出た家を次々と、名前は忘れましたが同じ一家が買っていたために家屋が同一の持ち主のものとして残ることになり、最終的にはその一家も村を離れました。しばらくは賃貸人たちが村に住んでいたのですが1970年代にその人たちも村を離れ、誰もいなくなったのだそうです、村の持ち主と言える一家も村に住んだことはない世代となり村に興味がなく持て余し、最終的には近隣の村に二束三文で売り渡したそうです。だから村がそのまま残ったんです。買い取った近隣の村も活用方法が分からずそのまま放置していたそうですが、20世紀終わりぐらいから少しずつイベントなどを行うようになり、家屋や残っていた共同の建物を修復し現在のような姿になったのだそうです。

ガイドさんの説明以外に、機織りやパン焼きなどの実演や村人の話(昔の衣装を来て俳優さんが本人になり切って村の日常がどうだったか語ります)も楽しめました。観光地として見どころがありますが、場所が不便なのと大々的に宣伝していないせいか、超有名という感じはしません。団体が押し寄せたりもしなさそうで昔のままの魅力味わえるのが良いです。

ガイドさんの説明で心に残ったのは、人が集まって栄えていた農村が機械化によって外から来る労働者が減り、村の行事なども活気がなくなって土地が荒れていった、という点と昔の人の価値観でした。この家は裕福、こっちはちょっと貧乏、と家の装飾の度合いで経済力が分かる、と説明がありましたが、裕福でも現代の感覚で見るとかなり質素でちょっと貧乏と言われた家と大きく変わらないように見えました。また、女の子は少し大きくなると機織りをして生活に使う布(ふきんやシーツ類が目につきましたが服の生地も入るのかもしれません)を作る作業をする、という話も面白かったです。そして結婚する時に布の量が多い方が働き者ということになって嫁ぎ先を見つけるのに有利になるのだそうです。実績を示すってことですね。

農村が辿った歴史や昔の暮らしが見られるのも面白く、実物が目の前にあるので説得力があります。私は朝着いてお昼を食べ、午後あまり遅くならないうちに出なければならなかったのですが、もう少しゆっくりできたらな、と思いました。村の中に軽食を出す飲食店が1軒だけあり、そこで簡単なものを買って食べました。昔の衣装を来た人たちが接客してくれました。

Poul Fétanを見学できるのは4月から9月までで有料です。私は車で行きました。調べましたが他の交通機関はないようです。私は最初に述べたようにカルナックから行きましたが、場所的にはLorientから33km、Vannesから46kmとこの村の案内サイトに書いてあります(リンクはこの記事の最後に入れました)。行ってみるとかなり山奥、という印象で、車で何もない山の中を走りながら、本当にこの先に何かあるんだろうか?と何度も思いました。それぐらい僻地なのですが、だからこそ村ごと残ったのだと思います。

この村の案内サイトはこちらです:Poul Fétan。 英語の説明もあります。

YouTubeに動画があったので掲載します。私の見たものと同じではありませんが、雰囲気は同じです。洗濯場で洗濯しながら世間話をして情報交換している女性たちのシーンは俳優さんのよる演技ですが雰囲気が出ていますね。年配の観光客が、この村だけでなく他の地域でもこのような生活をしていたので子供時代に見たのを思い出した、と言っています。テレビニュース内のドキュメンタリーの動画と思われます。