フランス語で会話したい

フランス語を話すには ― 知っている単語や表現が必要な時に出て来ず、話せないのはどうしてか

フランス語を勉強なさっている方には話す力を伸ばしたい、話せるようになりたい、と思っていらっしゃる方が多いですよね。そこでフランス語を話せるようになるにはどのように勉強したらいいかについて書きたいと思います。

私もフランス語以外にいろいろな外国語を勉強した経験がありますが、どの言葉を勉強する時もその言語で話せたら楽しいし役立つだろうと思ってきました。旅先で会う人と外国語でコミュニケーションすること、知人や友人と勉強した外国語を使って会話することはやはり学習者の夢であり、目標でしょう。

ところが、習ったことがすぐ口から出てこない、基礎文法は一通り勉強したはずなのに話せない、話そうとしても言葉を探すのに時間がかかってスムーズな会話にならない、知っていることが必要な時に出てこない、などさまざまな悩みを抱えた学習者さんが多いのも事実です。

私はフランス語を話すのに必要なことを以下の6つだと考えています。(フランス語に限らず他の外国語でも同じことだと思うのですがここは私の専門のフランス語を中心に話を進めます)

1 文法知識
2 必要なボキャブラリー
3 通じるように言う発音の能力
4 リスニング力
5 コミュニケーション能力
6 反射的に反応できる力

1. 文法知識

相手に伝わる文を組み立てるのに基本的な文法知識は不可欠です。とりあえず単語をたくさん覚えれば、と思っている方がたまにいらっしゃいますが、単語を羅列して伝えられることは限られています。入門段階では挨拶やよく使う決まり文句をいくつか覚えることも有効ですが、自由に自分の言葉として話すためには、伝わるように文を作れるようにならなければなりません。それには基本的な文法知識が欠かせません。フランス語の場合、何をもって基礎文法と呼ぶのか掴みにくいかもしれませんが、日常的な会話や旅行会話には、現在・過去・未来の時制が使えて、私は~と思う、などの複合文も作れる中学の英語で扱う範囲の文法事項と同等の初級フランス語文法を一通り身につければ良いと思います。

 

2. 必要なボキャブラリー

話すトピックに関連する語彙が必要なのは言うまでもありませんね。興味のある分野は話題にしやすいでしょうから、興味のある分野、ご自分が必要だと思われる分野のボキャブラリーを優先して覚えていかれると良いでしょう。こういう場面で使えそう、など想像すると覚えやすいと思います。

3. 通じるように言う発音の能力

フランス語のネイティブにもいろいろな訛りがあり、またフランス語を外国語として流暢に話す外国人話者にもそれぞれお国訛りがありますから、絶対に教材のCDの発音と同じでなければならない、ということはありません。ただ通じる発音である必要があります。

日本語では区別のしないBとV、RとL、Shi とSiの区別などが子音での主な注意点ですが、それ以外にTR、BR、BL、など子音の連続の時に間に母音を入れると通じなくなるので注意が必要です。

またあまり意識されていないことですが、例えば日本語ではカプチーノというとき、プの母音が落ちてpだけになっても意味は変わりませんが、フランス語でこれをやると音節の数が変わって通じなくなります。こういったいくつかの点を抑えるだけで随分と聞き取りやすいフランス語になりますので意識して練習していくと良いですね。できれば発音指導の出来る人に何度かレッスンしてもらうのも有効です。

4. リスニング力

スピーチなどで自分が一方的に話す場合は別ですが、普通は相手の返事が分からなければ会話になりませんのでリスニングの力も必要ですね。文字だけを見て勉強するのではなく、音声教材を活用して入門段階からなるべくフランス語の音と親しみながら勉強なさった方が効率が良いでしょう。また、ナチュラルスピード、あるいはナチュラルスピードに近いものを聞いてそのスピードに慣れる必要もあります。妙に間延びした学習者用の録音ばかり聞いていては実際の場面では理解できない、ということになってしまいます。

リスニングの練習方法についてはこちらの記事をご覧ください→フランス語のリスニングの練習方法

5. コミュニケーション能力

外国語を話せるようになりたい場合、外国語の力以外に人とコミュニケーションする能力がやはり必要です。心を開いて話をする、相手が言いたいことを理解しようとする、などコミュニケーションの基本は外国語であっても同じです。

それから言い間違いや発音の悪さなどを気にして、過度に謝ったり恐縮したりする人が時々いますが必要ありません。誰でも外国語というのは難しいもので、フランスでは11歳から第一外国語 、12歳から第二外国語の勉強が義務付けられていますから、義務教育を終えた人は皆、外国語を勉強した経験があります。外国語学習の苦労を知っている人がほとんどですから堂々と自分の言いたいことを知っている言い方で言えば良いです。言い方や発音が多少拙くても誠意を持っていればそのことは大抵伝わります。

ここが重要!

6. 反射的に反応できる力

ここまでフランス語を話すのに必要な点について見てきましたが、文法知識もありボキャブラリーもあり本を読んだりメールを書いたりすることができるのに、会話となるとどうも言葉が出てこない、という方や、入門者でも習って覚えた文なのに、なかなか口から出てこない、という方が多いのはなぜでしょうか。

ここで学習に関連する記憶について考えてみましょう。記憶には短期記憶と長期記憶があり、学んだ外国語を使うには当然、長期記憶が必要ですが、その長期記憶にもいろいろな種類があるとされています。フランス語の文法や単語を覚えて読解したり、考えながら作文できる能力は陳述的記憶であり、話しかけられて咄嗟に答えるにはこの記憶だけでは不十分で、それを可能にするのは手続き記憶だと私は考えています。

陳述記憶は言葉で説明して覚えた記憶、つまり頭で覚えた記憶とでも言うのでしょうか。文法書を紐解いて理解して、規則はこうなっていると覚えて知っていることがそれに入ります。手続き記憶というと、よく自転車の乗り方が例に挙げられていますが理屈ではなく体で覚えた記憶ということでしょう。

話すために、理解して覚えた事項を手続き記憶にするには

そこで重要となるのは、どうしたら学んだフランス語を手続き記憶にすることができるか、ということですね。やはりこれはスポーツと同じで練習するしかない、としか言えません。スポーツのルールやラケットの持ち方や姿勢、素振りなどを習っても実際にボールを打ったり試合に出たりしてみなければ上達しません。外国語も同じことだと思います。

まず文法の練習問題をするときも音読する、動詞の活用も口に出して言う、テキストの音読など、すべて口を鍛えることになるので話す力を伸ばすことに繋がります。構文を利用してどんどん文を変換していく練習も有効です。私はこの構文練習で英語が話せるようになったと思っており、フランス語にもそれを応用しました。レッスンや独習で実際に口に出して、自分の知識でできる文を組み立てる練習をすると話す力がつきます。練習しながらその文を使う場面を想像すると、実際にその場面に出会うとその文を思い出すことに繋がります。

自分のレベルに合った表現力

そして最後はコミュニケーション力に繋がることですが、自分の知識の範囲内で分かることを組み合わせてどこまで自分の言いたいことを言うか、という表現力も必要ですね。初級レベルの簡単な文でもいろいろな可能性を持っており、組み合わていろいろなことを表現できます。その自分の力を信じて、この中で今必要なことを伝えるには?と考えて知っていることから何らかの文を作ることです。

私の経験が参考になればと思うのですが、フランスに来たばかりでまだフランス語が拙かった頃、お腹が空いたので軽く食べられるものが欲しいと思ってパン屋に入り、食事になるパンを探したことがあります。甘い菓子パンは嫌だったのでお店の人に「これは塩辛いですか。」と聞きたかったのですが「塩辛い」と言う言葉が思い出せず « Est-ce que c’est sucré ? » (これは甘いですか)と聞きました。そうしたらお店の人が « Non, c’est salé. »(いいえ、それは塩辛いです) と答えてくれて欲しいものが買え、同時に「塩味の、塩辛い」という言葉を覚えることができました。他にも似たような経験を何度もしています。ある単語を知らないから諦めるのではなく、他のことで代用して用を足せないか考えるのです。「ちょっと待ってくださいね~、単語を忘れたので今辞書で調べてます。(Attendez. Je suis en train de chercher un mot dans mon dictionnaire)」みたいに言うのもありだと思います。コミュニケーション力を発揮して面白く言えば待っていてくれるでしょうし、その後の会話に発展する可能性もありますね。

自分のレベルに落とし込んで話す力も練習を積めば慣れていって向上していきます。そのために、昨日何をした、週末に何をした、など生徒に質問して話させるのは語学レッスンでよくあるパターンですが、それだけでは内容が限られますから、私自身は、読み物の内容や聞いたこと、テレビで見たことについて自分なりに話すことが一番練習になったと思っています。フランス語で読んだり聞いたりしたことを、自分なりに話すのが一番練習になります。フランス語でなくても良いのですが、フランス語でインプットしたものを同じフランス語で自分なりにアウトプットし直す方が別の言語のものを翻訳するより楽で、その分、話す方に集中できます。初心者でも自分のレベルの教材についてこれをすれば良いのですからまだそういうレベルになっていない、ということはありません。練習問題などで文法をやったらそれを使っていろんな文を作って話したいことを話すのも文法事項の定着につながります。私は、間違えたり通じなかったり、忘れた単語や表現をノートで確認したり、を繰り返しながら少しずつフランス語の運用力が向上していった経験をしました。

まとめ

フランス語を話すには、基礎文法、発音、語彙、リスニング力、コミュニケーション力と合わせて手続き記憶に学習したことを入れていくことが必要、そして自分のフランス語レベルに合わせて表現する力を磨くということですね。先に基礎文法を身に着けてから他の勉強を始めることももちろんできますが、それでは時間がかかるので同時進行で進めて良いと思います。そして一通り基礎文法をやったら、発音をさらに磨く、いろいろなフランス語に触れて語彙やリスニング力を高める練習をする、自分のレベルで表現する練習をさらに続けていく、ということですね。それを楽しくやって継続して行けば絶対に話せるようになります。

ネイティブと同じように話せなければ話せたことにならない、みたいに考えてる人がたまにいますが、自分のアイデンティティを大事にして自分の立場でフランス語を話せば良いのです。外国語訛りで堂々と話している人もたくさんいます。

外国語を勉強しているとその国を旅しているような気分になりますよね。そういうのを楽しみながら勉強を続けていきましょう。

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